いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「ご無事でしたか?!」

駆け付けた警備員らが、慌てた様子で訊ねてくる。

「今消えた人物は、許可証を掲示してなかったでしょう?」

「あ…あ、これのことですか」

病院を訪れたときに受付で渡された、入館許可証を晴海は首から下げている。

風弓は持っていないが、入院患者として登録されているためそもそも必要ない。

「ええ。これを持たずに敷地内に立ち入るとすぐに判るんですよ。未確認の生体反応が突然現れたのでまさかとは思いましたが、やはり不審者でしたか」

「しかし、まさかこの警備を掻い潜って侵入するなんて…」

「――君たちの警備体制に不足があったんだ。もっと警戒を強めるべきだね」

戸惑う警備員たちの背後から、高圧的な声が突如割って入る。

「真都(まなと)様…!申し訳ありません」

慌てて警備員たちが一礼した先に、凡そ警備員には見えない白金髪の男の姿があった。

「なんだ…?随分と偉そうな奴が出て来たな。誰だ、あれ」

風弓がこそりと呟く。

確かに初めて見る顔ではある、が。

「何かあの人、少し誰かと似てるような…」

「しかしお嬢さん方が無事で何よりだったよ。か弱い女性たち相手に、下劣な侵入者の魔の手が及ぶ前に気付くことが出来て良かった」

金髪の男はそう言いながら晴海と風弓の目の前まで進み出た。