「何処かの国の誰かにも、そんな奴がいたのかもな」
香也は謡うように嘲笑うだけで、それ以上はそのことに言及しなかった。
「…晴海。俺はお前にそんな想いはさせたくない」
次いで紡がれたのは、打って変わって穏やかな声色と優しげな言葉。
「香、也…?」
「俺は、お前にそんな不安そうな顔をさせたりしない」
不意に、時計塔の最上階で香也にされたことを思い出す。
『晴海、あいつを見るのは止めろ。陸じゃなくて…俺を見ろ』
でもあの行為は自分や陸を動揺を誘うためのもので、それ以上の意味はない、筈――
「其処で何をしている!?」
突如上がった叫び声に振り向くと、遠くから数人の警備員が駆け寄ってくる姿が見えた。
「ち、もう時間切れか」
香也は小さく舌打ちをしてから、風弓の隙を突いて晴海の手をやんわりと捕らえる。
「えっ」
「またな、晴海」
「っ香也!てめえ何っ…」
軽く掌に口付けてきた香也は、風弓に気付かれる寸前に素早く身を翻す。
そして次の瞬間、香也の姿は現れたときと同じように音もなく消え去った。
香也は謡うように嘲笑うだけで、それ以上はそのことに言及しなかった。
「…晴海。俺はお前にそんな想いはさせたくない」
次いで紡がれたのは、打って変わって穏やかな声色と優しげな言葉。
「香、也…?」
「俺は、お前にそんな不安そうな顔をさせたりしない」
不意に、時計塔の最上階で香也にされたことを思い出す。
『晴海、あいつを見るのは止めろ。陸じゃなくて…俺を見ろ』
でもあの行為は自分や陸を動揺を誘うためのもので、それ以上の意味はない、筈――
「其処で何をしている!?」
突如上がった叫び声に振り向くと、遠くから数人の警備員が駆け寄ってくる姿が見えた。
「ち、もう時間切れか」
香也は小さく舌打ちをしてから、風弓の隙を突いて晴海の手をやんわりと捕らえる。
「えっ」
「またな、晴海」
「っ香也!てめえ何っ…」
軽く掌に口付けてきた香也は、風弓に気付かれる寸前に素早く身を翻す。
そして次の瞬間、香也の姿は現れたときと同じように音もなく消え去った。


