いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「…何の、用なの?」

香也の眼をじっと見つめ返すと、くすくすと笑い掛けられる。

「お前に逢いに」

「…ふざけないで」

「冗談でこんなところ来やしない。あれ以来、陸の親父が強力な結界を春雷の街中に張り直してるからな。忍び込むのも一苦労なんだぜ?」

だとしたら、何故。

「ならどうして私に構うの?私のことは、陸を連れ戻すために利用しただけでしょう?」

すると香也は苦笑しながら、ゆっくりとこちらへ歩み寄った。

それに合わせて風弓が身構え直す。

だが晴海はその紫水晶の眼から目線を逸らせず、呆然と立ち尽くしていた。

「……あいつの傍にこのまま居続けても、お前が傷付くだけだ」

「えっ…」

「あいつはいずれ、お前と離れなきゃならなくなる。たとえあいつ自身がそれを望まなくても、な」

心中の不安を見通しているかのような言葉に、胸がずきりと跳ね上がる。

“あいつ”とは――陸のことか。

「国がでかい程、陸のような立場の奴は自分の好きには生きられない。無理に我を押し通そうものなら、代わりに誰かが必ず不幸になる。領主の一族なんか何処も同じようなものだ」

皮肉げな物言いに、風弓がその意図を推し量るように首を傾げた。

「…まるで、何処かで実際に見てきたみたいな言い草だな?」