「…何の、用なの?」
香也の眼をじっと見つめ返すと、くすくすと笑い掛けられる。
「お前に逢いに」
「…ふざけないで」
「冗談でこんなところ来やしない。あれ以来、陸の親父が強力な結界を春雷の街中に張り直してるからな。忍び込むのも一苦労なんだぜ?」
だとしたら、何故。
「ならどうして私に構うの?私のことは、陸を連れ戻すために利用しただけでしょう?」
すると香也は苦笑しながら、ゆっくりとこちらへ歩み寄った。
それに合わせて風弓が身構え直す。
だが晴海はその紫水晶の眼から目線を逸らせず、呆然と立ち尽くしていた。
「……あいつの傍にこのまま居続けても、お前が傷付くだけだ」
「えっ…」
「あいつはいずれ、お前と離れなきゃならなくなる。たとえあいつ自身がそれを望まなくても、な」
心中の不安を見通しているかのような言葉に、胸がずきりと跳ね上がる。
“あいつ”とは――陸のことか。
「国がでかい程、陸のような立場の奴は自分の好きには生きられない。無理に我を押し通そうものなら、代わりに誰かが必ず不幸になる。領主の一族なんか何処も同じようなものだ」
皮肉げな物言いに、風弓がその意図を推し量るように首を傾げた。
「…まるで、何処かで実際に見てきたみたいな言い草だな?」
香也の眼をじっと見つめ返すと、くすくすと笑い掛けられる。
「お前に逢いに」
「…ふざけないで」
「冗談でこんなところ来やしない。あれ以来、陸の親父が強力な結界を春雷の街中に張り直してるからな。忍び込むのも一苦労なんだぜ?」
だとしたら、何故。
「ならどうして私に構うの?私のことは、陸を連れ戻すために利用しただけでしょう?」
すると香也は苦笑しながら、ゆっくりとこちらへ歩み寄った。
それに合わせて風弓が身構え直す。
だが晴海はその紫水晶の眼から目線を逸らせず、呆然と立ち尽くしていた。
「……あいつの傍にこのまま居続けても、お前が傷付くだけだ」
「えっ…」
「あいつはいずれ、お前と離れなきゃならなくなる。たとえあいつ自身がそれを望まなくても、な」
心中の不安を見通しているかのような言葉に、胸がずきりと跳ね上がる。
“あいつ”とは――陸のことか。
「国がでかい程、陸のような立場の奴は自分の好きには生きられない。無理に我を押し通そうものなら、代わりに誰かが必ず不幸になる。領主の一族なんか何処も同じようなものだ」
皮肉げな物言いに、風弓がその意図を推し量るように首を傾げた。
「…まるで、何処かで実際に見てきたみたいな言い草だな?」


