いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「へ?」

ふと呟いた言葉に、風弓は素頓狂な声を上げた。

「……陸はこんな立派な国の領主様の息子なんだもの、もっと身分のある家柄の出身とかじゃなきゃ…駄目なんじゃないのかな」

歩みを止めると、風弓が勢い良くこちらを振り返った。

「…なんだよ、それ。誰かにそう言われたのか」

「違うよっ!ただ私が勝手に不安になっちゃった、だけ…」

「あんなでかい家の息子だし、そりゃ不安になるのも解るよ。だけどそれは邪推だろ?まあ、もし陸がそんなこと姉ちゃんに言いやがったらぶん殴ってやるけどな」

「風弓っ」

さらりと物騒なことを言い放つ風弓を見下ろすと、その表情は予想外なことに酷く悲しそうだった。

陸の前でこそ反発して見せるが、自分と陸とのことを心底心配してくれているのだろう。

「……それに、一番わからないのは私自身の気持ち」

「…姉ちゃんの、気持ち?」

「これからのこと、どうすればいいか全然先が見えなくて…不安なの。私に何が出来るのかって…」

「姉ちゃんは、どうしたいんだ?俺は姉ちゃんのしたいことを――」

風弓は口にしかけた言葉をふと唐突に切ると、正面を向いて身構えた。

「風弓?」

その視線を追うと、其処には一つの人影があった。

不意に強い風が吹いて、砂埃や枯れ草が空に舞い上がる。

「――よう。護衛もつけずに、暢気に散歩か?晴海」