いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「はる…今度ちょっと出掛けようか」

そうして何となく口にした問いに、娘はかくんと首を傾げた。

「…何処、に?」

「炎夏って国なんだけどね、いつでも天気が良くて暑いところなんだ。秋雨とは随分違うだろ?」

「………」

人見知りが激しく家に籠りがちで、殆ど秋雨の外へも出たことのない娘は戸惑うように俯いた。

「炎夏に知り合いが住んでてさ、前から遊びにおいでって言ってるんだ。はる、どうかな」

「……ん…」

無理に、とは言わない。

もしこの時点で娘が嫌がれば、転居の話もなかったことにしよう。

「母さん、は…?」

「?」

そろりと見上げた眼に、顔を覗き込まれる。

「…もし母さんが炎夏に行きたいんなら、行く」

「あたし?」

思わず眉根を寄せて問い質すと娘は真っ直ぐこちらを見たまま頷いた。

「母さんはいつも…母さんだって寂しいのに、私のことを優先してくれるから…だから、炎夏に行くかは母さんに決めて欲しい」

「はる」