倫敦市の人々

切っ先が刺さった程度、またも傷は浅い。

逆に言えば、アイヴィーが手心を加えているのだが。

「……」

切っ先についたジャックの血。

それを見つめながら、アイヴィーは無表情。

「啜る気にもならんな。獣臭きつい血など…」

刃をビュンと振るうと、その血は床に飛び散った。

「家畜の価値すらない血の持ち主など、早々に八つ裂きにするしかないのだよ?牙を隠し持つならば、早いうちに出したまえ。持ち腐れのままでは死ぬに死に切れまい」

「っっ…」

ジャックとて、この結果を見るほど弱くはない。

ユヤの発砲を回避するほどの人間離れした身体能力の持ち主だ。

しかしそれを以ってしても、アイヴィーの動きにはついていけない。

これが吸血鬼。

真なる支配種にして夜の王を名乗る者…。