ユヤが叫んだのは、店の灯りが届かぬ闇の中。

一見すると誰もいない漆黒だった。

倫敦市郊外は、現代とは思えぬほどに闇が濃い。

それこそ、『人ならざる何か』が潜んでいるのではないかと思えるほどに。

ピンと耳を立てたロンも、闇を凝視しながら低く唸り声を上げる。

「ロン…?」

人間よりも五感の鋭い犬の事だ、何かに気付いたのだろう。

知らずジャックも警戒し、椎奈は怯えたようにジャックの背中に隠れる。

一同が睨む闇の中。

「…別に隠れてた訳じゃないんだけどね…」

女の声がした。