明け方の路地。

「ふぅん…」

石畳に落ちた式札を拾い上げ、黒いドレスコートの少女は見入る。

「運がよかったんだねえ…助けが入るなんてさ」

手元で式札を弄びつつ、少女…闇珠はクスリと笑った。

獲物が上手く捕獲できなかった事を、悔しがる様子はない。

寧ろ思い通りに事が運ばないのを、楽しむだけの心の余裕が彼女にはあった。

「簡単だよぉ」

闇珠はドレスコートの内から、無数の式札を取り出す。

それに羽ペンで何か描きながら。

「私には友達いっぱいいるもん」

そう言って口角をつり上げた。