何だか政治家のマニュフェストのようだ。

夢物語のような椎奈の言葉に、ユヤはやれやれと溜息をつく。

が。

「いいじゃんそれ!」

フミが一番に飛びついた。

「通った町は幸せになるイグレシアの方針ともピッタリ!」

「一緒に頑張りましょうねフミさん!」

キャッキャとはしゃぐ二人。

「……」

言葉少なな瑠架とコートニー。

二人は現実に、これまでこの倫敦市で吸血鬼達と抗争を続けてきた身だ。

椎奈が語る理想の実現が、どんなに困難なものか最もよく知る者。

だがそれだけに、椎奈の理想は眩しい。

思わず手を伸ばしてしまいたくなるくらいに。