俺は彼女が眠る墓地にいた。


墓石に新たに刻まれた君の名前。

嘘みたいだった。


目を閉じれば君のぬくもりを感じることができるというのに。


ロウソクに火を灯し、線香をあげる。


線香から発せられる暖かい香りが俺を正気に保させてくれた。


きっと線香というのはそういう役割をもっているのだろう。


取り残された者たちの気持ちを落ち着かせ、穏やかな気持ちで死を受け入れる。


その気休めなのだ。


俺は合掌し目を閉じた。


目蓋の裏側では熱いものが込み上げ、鼻がツーンとしてきた。ダメだ。こんなところでみっともない。


わかっている。でも・・・。