思いっきり、ぎゅうううっと俺の腕を抱きしめるお嬢。

…そういう大事な返事は、ドサクサに紛れて言うな。

感動が薄れるじゃねえか。

「ふん」

俺はむくれた顔のまま廊下を歩き始めた。

腕を組んだまま、幸せそうな顔で歩くお嬢。

あ、歩きづらい。

「彼女は分かったから放せ」

「やーだ」

「歩きづらいから放せ」

「やーだ」

…ああもうっ。

俺は立ち止まり、お嬢の顔を見た。

「胸の洗濯板が肘に当たってるから放せ」

「なっ…」

お嬢は真っ赤な顔をして俺を見る。














平手打ちの乾いた音が、夕暮れの廊下に響いた。