お嬢の目が、真ん丸になった。

初めて会った時の、あのフクロウみたいな真ん丸な目。

でも、違うのは、あの時みたいな獲物を狙うような目じゃなくて。

「…だ、駄目だよ、反則だよ…そんなの言うの…」

完全に、恋する乙女の瞳だった。

「ちっ…」

くそ、まだはぐらかすのかよっ。

こっちは相当恥ずかしいの我慢して言ってやったってのに!!

「もういいっ、帰るっ」

俺はお嬢の隣を通り過ぎて、教室を出て行く。

「あんっ、待ってよ!」

パタパタと、お嬢が俺の後を追ってきて。

「おわっ」

俺の腕にしがみついた。

「は…放せよ…」

「放さない。スキンシップ好きなの知ってるでしょ?」

メチャクチャ嬉しそうなお嬢の表情。

「放せって。彼女でもない奴がこんな事してたら、誤解されるだろっ」

俺は振りほどこうとするが、お嬢は必死に俺の腕をつかみ続ける。

「じゃあいいよっ」

振り回されながらも、笑顔でお嬢は言った。

「今から彼女になるから、誤解じゃないよっ!」