俺も席にのけ反ったまま、教室に視線を泳がせる。

何人か見知った連中がいるようだ。

特に親しいという訳でもなく、顔を知ってます、程度の生徒達。

その中に混じって。

「おー、小田桐ー」

一人の男子生徒がこっちに近づいてきた。

「羽山、お前も8組かよー」

俺は片手をあげて、その男子生徒とハイタッチ。

…羽山邦彦。

一年ではクラスこそ違ったものの、トモダチのトモダチ、という奴で知り合った。

まぁ、そうでなくても存在くらいは知っていただろう。

とある建築会社の社長の息子。

ほどほどに金持ちで、オマケにハーフかと思わせるほどの端正な顔立ち。

ちょっとしたメンクイなら食いついてくるようなツラしてるからな。

一年の時にコイツに告ってきた女は両手じゃ足りない。

足の指も欲しいくらいだ。

まぁ、世間一般で言うところのプレイボーイ、である。

「お、ゆきちゃんも一緒なんだな。よろしくー」

俺への挨拶はそこそこに、羽山はすぐに宗方に視線を向ける。

女と見たら声をかけずにはいられないタチなのは相変わらずだ。

男子校に転校させたらどれくらい無口になるのか、見てみたい気もする。