授業中。

「ねねね」

宗方がシャーペンで俺の背中を突っつく。

「何だよ?」

振り向くと、珍しく宗方はデレデレな顔をしていた。

「羽山君の事なんだけどさ…彼女とかいるのかな?」

「さぁ?一年の時は特定の相手決めずにとっかえひっかえだったけど?」

俺が答えると、宗方は、ふぅん、と頷く。

「さっきさぁ、羽山君に携帯の番号聞かれたんだけど、どう思う?」

「どう思うって?」

「だからぁ…」

彼、私に気があるのかしらん?

宗方の顔にはそう書いてある。

あ~…お前の期待をくじくようで悪いんだが。

アイツがメアドや携帯の番号聞くのは挨拶代わりだ。

宗方に限ってやってる事じゃない。

お前、アイツの携帯のメモリ見た事ないだろ?

卒倒するぜ?

同じ挨拶代わりでも、他人に肉体的苦痛を与えるお嬢と精神的苦痛を与える羽山では、どっちがマシなのかなぁとか、考えなくもない。

…が、宗方には羽山の携帯メモリの件は話さずにおいた。

だって。

「ちょっといいよね、羽山君って」

そう言った宗方の目は、完全に恋する乙女の瞳だったから。