呆れた奴だ。

…こいつは男同士の友情は育める奴だが、こういう女に節操がないところはイマイチ感心できない。

羽山は、二兎を追う時はどちらかなんて選ばない。

当たり前のように二兎とも手に入れる。

俺にどちらを選ぶか訊いてきたのは、こいつなりの配慮という奴だったのだろう。

とはいえ、俺は小娘の生意気な発言をいつまでも笑って聞いてやるほど懐は広くないし、お嬢のビンタを毎日食らい続けて笑っていられるほど打たれ強くもない。

特に後者はパンチドランカーの症状が心配だ。

あ、パンチドランカーってのは、頭打たれすぎてちょっと爽やかになってしまう症状の事な。

「じゃあ遠慮はいらないんだな?」

羽山は両手をパン、と打って笑みを浮かべた。

「さてと、どっちから頂いちゃおうかなぁ…」

…こいつの性格からして、気の強い女を従順にさせるのが好きそうだ。

となると、まずはお嬢がターゲットかな…。






誤解のないように言っておくが、俺は知り合いの女の子が羽山にヤリ捨てされるのを黙って見ているほど人でなしではない。

大体にして羽山は女癖と手癖が悪いのだから、殆どの場合、俺はたしなめている。

が、今回は何もする気がなかった。




どういう訳か、お嬢は羽山には御しきれないような。

そんな確信めいたものがあったのだ。