俺の声が聞こえたんだろうか。

「そんな事ないよ」

教室に入ってくると同時に、お嬢は会話に参加してきた。

そしてハンカチを綺麗に畳みながら。

「卓也君、Mの匂いがするから」

サラッと、非常に失礼な事を言った。

「だっ、誰がMだっ!?」

「だってぇ…」

お嬢はニヤリと笑う。

「私の事無視して無抵抗でいる時の表情といい、私のビンタくらって降参した時の許しを乞う表情といい、ものすごーく私の嗜虐心を刺激してくれるのよねぇ…」

彼女はチロチロと舌を出す蛇を思わせる、戦慄を覚えるような言葉を口にした。

そして、俺の頬にスッとハンカチを当て。

「仲良くしましょうね。卓也君?」

「はっ、はひっ…」

グビリ、と唾を飲み込み、俺は張子の虎みたいにカクカクと首を縦に振った。

あー、もういい。


イジラレキャラ確定だけど、お嬢には逆らわない事を、ロボット三原則のように胸に刻み込む。

笑いたければ笑うがいいさ。

命あっての物種だ…。