お嬢は窓際に頬杖をついて、俺に話しかけてくる。

「なっがいねー、宇多ティーの話」

「……」

俺は宇多ティーの話を聞くふりをして無視を決め込む。

返答なんてしようものならまたお嬢のペースに巻き込まれかねない。

ここは完全無視を決め込み、ホームルーム終了と同時にロケットスタートで教室から速やかに離脱、以後の行動は独立部隊ならではの機動力を生かした作戦を展開するのである。

が、この作戦には大きな穴がある。

「あれー?卓也君なに真面目に話とか聞いてるのー?」

宇多ティーの話が終わるまで、この場で防戦一方なのである。

沈黙を守ったまま、ひたすらお嬢の猛攻に耐えなければならない。

「なぁに無視してんのよー」

俺の頬をつまみ、ムニーッと引っ張るお嬢。

無抵抗なのをいい事に好き勝手にやっている。

コイツはアレだろうな。

白旗振ってる民間人にでも、平気で攻撃加えるタイプなんだろうな。

「あは、卓也君ほっぺ柔らかいねー」

お嬢の行動を見てウズウズしたのか、後ろの席の宗方までが、俺の頬に手を伸ばす。

右の頬はお嬢が、左の頬は宗方がつまんで、引っ張っている。

二人の女の子にいいように弄ばれる俺。

くっ、屈辱だ…!!