「よーし、ホームルームはじめるぞー」

意気揚々と教壇に立つ宇多ティー。

申し送り事項を淡々と述べた後、それでは、とばかりに教壇に前のめりになる。

くそ、今日もか。

辟易、といった表情のクラスメイトには気づきもせず、宇多ティーはテレビで見た感動話かなんかの感想を延々と述べていく。

ネタをテレビから仕入れてくるな、子供じゃないんだから。

宇多ティーが話し始めて15分。

そろそろゲンナリして壁にもたれかかっていると。

「卓也君」

耳元で声がした。

振り向くと。

「や♪」

お嬢が窓越しに俺の顔を覗き込んでいた。

どうやら7組のホームルームはもう終わったらしい。

後は帰るだけとなり、うちのクラスに顔を出しにきたのだろう。

…先日のやり取り以来、俺はコイツをめでたく天敵に認定している。

こいつはどうも、俺をいいイジリ相手と思っている節があるのだ。

そうだな…犬を床に転がして仰向けにして、腹の辺りを掻いている光景。

アレを想像してもらえるとわかりやすい。

別に掻いてくれなんてコッチは言ってないのだが、掻かれると何となく抵抗できなくなってしまう。

あのいいようにやられている感が、何とも言えず苦手なのである。