お嬢と宗方は、手を振りながら帰っていく。

「あー、いいなぁ小田桐」

ウットリしたように羽山が言う。

「何がいいんだ。男が女に殴られて」

「ああいうのは殴られたって言わないんだよ。あの小さな手で、優しくペチペチッて…うわあ、めっちゃ甘えさせて欲しい~!」

羽山は俺の横で一人身悶えていた。

駄目だコイツ。

「ったく」

俺は鼻息荒く、遠ざかっていくお嬢たちの姿を眺めていた。

妙な女に目をつけられたもんだ。









そう、俺はこの日、完全にお嬢に捕捉されていた。

戦闘機がミサイルを発射する前にロックオンするみたいに。

もう、逃げられなくなっていたのだ。