「さてと」

食う物を食って満足したのか、宗方とお嬢が立ち上がる。

「ご馳走様、そろそろ私達帰るね」

本当に飯を食うためだけにここまでついて来たらしい。

図々しい奴らだ。

なのに。

「なんだー、もう帰っちゃうの?」

羽山は表情緩ませっ放しでお嬢や宗方に言う。

お前はプライドってものがないのか。

「そんな言わなくても、明日また会えるじゃない」

お嬢が羽山の頭を撫でている。

コイツ、やたらと相手に触れたがるよな。

宗方が言ってた、スキンシップが好きってのは本当らしい。

「ほら、卓也君も」

お嬢が俺に近づいてくる。

「バッカ、俺は頭なんて撫でて欲しく…」

言いかけた時。

ペチッ、と。

お嬢は俺の頬を軽く平手で叩いた。

「あ?」

俺、今、叩かれた?

「明日また遊んであげるから、いい子してるのよー?」

ペチペチと。

甘ったるい声を出しながら、お嬢が俺の頬を叩く。

…本当なら、ここは屈辱的とか思うべきなんだろうか。

でも、お嬢の平手は何だかむず痒いような、こそばゆいような…。