「依亜」


真剣な顔をする史音。


この時の史音は、族での史音だ。


族モードの史音は、普段の可愛さがなくなる。


男の顔になるんだ。


だから分かりやすいんだよなー。


つぅか、族の話…か。


史音が話す事といったら一つしかねぇよな。


「戻ってこい。…狼鬼に戻ってこい。みんな待ってる」


“戻ってこい”


ああ、私はきっとそう言ってほしかったんだ。


だけど…っ。


手をぎゅっと握る。


力を入れすぎたため、血が滲み出てきているが、この際は無視だ。


「依亜っ」


ごめんなっ。


私はもう戻れないんだ…っ。