「月美!」 壁にもたれ掛かり、今にも溢れ出そうな涙を零さないように上を向いた瞬間。 聞き間違える事なんてない、愛しい声に名前を呼ばれた。 「ひ、かるっ」 哀しい目をして、あたしを見つめるその胸に場所など考えずに飛び込んでしまいたくなった。 どうして、会いたい時に貴方は現れるの? キョロキョロと辺りを見回し、 「おいで」 そう差し伸べた手を……あたしは迷うことなく握ってしまった。