極道娘の悩み事。



『虎沢の女は代々勤勉だ。だからお前もしっかり勉強して賢い女になれ』




これはお爺ちゃんと私の約束だ。




だから授業だけはしっかりうける。



成績も常にトップをキープしてる。




(お爺ちゃん私、頑張ってるよ!)




窓から空を見上げる。




綺麗な澄んだ秋晴れの青空が広がっている。







…お爺ちゃんまだ生きてるけど。





授業も終わり、休み時間も一人で過ごし、何事もなく放課後がやってきた。




(さて帰ろうかな…太郎も待ってるだろうし)




いつも坂の下よりもう少し離れた所に車をつけて、私の帰りを待っていてくれる太郎だ。




いそいそと靴を履き替え、校門を抜けようとしたとき、目の端に数人の集団が写った。




(…なんだろ?)





なんだか少しよろしくない雰囲気がその場を満たしている。





少し近づいてみると、やっぱり柄の悪い上級生が固まっていた。




そしてその集団の真ん中に小さな下級生。




とても穏やかな感じではない。




下手にグレたような奴らが溜まってるだけならスルーしたけど…






「あのー、何してるんですか?先輩方」




「あ"?…あー何だ女かよ。何?何か用?」




「だから、何してるんですか?今。何なう?」




「は?なんだお前。馬鹿にしてんの?」




「してないですよー。聞いてるだけです。」




下級生をチラリと見ると、目には涙を浮かべてこめかみや口元には真っ青な痣がある。









「………」





「おい…今ならまだ逃がしてやるよ。さすがに女にまで手出すのは忍びねーしな…それともなに?かまってほしかった?」




ゲラゲラと下素い笑い声が耳に入ると、何かが頭でぷつりと切れた。





「先輩…あんまふざけたことしないで下さいよ…」





「…あ?」





「この子に何してたんだって聞いてんだよ……理由によってはまだビンタくらいで済ましてやりますよ…?」




周りがの空気が凍りつくほど、ひどく冷たい声がでた。




「な…にって…先輩が後輩に教育してやって何がわりーんだよ、大体お前関係ねーだろ。お前こそ女だからって、調子乗ってんじゃねーよ…っ!!!」




右頬に鈍い痛みが走る。




口の中に血の味が広がるのと、

私の右足が相手のこめかみにめり込むのと、

どっちが早かったんだろう。




どさりと白目を向いた男が倒れた瞬間に、周りにいた奴らもわっと逃げ出した。





本当は一人ずつしばきたいところだったけど、無駄な争いはあんまりしないほうがいい。






「…えーっと…大丈夫?」





恐怖でなのか、立ち上がれずに固まっている下級生の男の子に手を差し出す。





「あ…ぁ…」





「立てる…?」





もう一度問いかけると、手をぱしりと振り払われた。





「さ、触らないで…っ!助けて!誰か!!!」




すると周りに人が集まってきて、私に視線が集中する。





周りの声は聞こえないけれど、言ってることは大体想像がつく。