「なに…疾風に心配かけるこたねぇよ……ただな…………
…おい、葉っぱよこせ」
相変わらずゆったりとしながらも威厳のある喋り方だ。
お爺ちゃんの隣にいた顔に大きな傷をつけたおじさんが鞄からキセルをさっと取り出した。
葉っぱ、というのは隠語で、要するに大麻だ。
お爺ちゃんは満足げにキセルを片手に煙を吐き出した。
「……そんな顔すんな疾風……美人が台無しだ……。
……いいじゃねぇか、こんな老い耄れが…残り少ねぇ時間くらい好きに生きるさ……」
私に向かって煙をふぅと吐き出す。
すごく嫌な匂いが辺りを満たす。
私が余計に顔をしかめるのをふ、と笑うと、またすぅっと煙を吸って、ゆっくり吐き出しながら喋り始めた。
「影山さんとこによぉ……うちの奴らが5、6人ほどお世話になったみたいでな…」
影山、と言うのは最近になって急に名を上げ始めた組織で、虎沢と最近大きな抗争があった。
もちろん、死人も数人出て、何人か捕まった。
確かに大きな抗争ではあったけれど、それでお爺ちゃんが出てくる訳がない。
お爺ちゃんの目をじっと見つめる。
「……いい目をするようになったな…」
またゆっくりと、煙を吐く。
「……それでもって今度………ご丁寧にうちの可愛い可愛い一人娘に焼き入れてやるだなんて言ってくれてなぁ………」
周りの殺気立った空気がぶわっと広がった様な気がして、皮膚が粟立つ。
「………疾風…………お前に、人を殺せるか…?…」

