「大和のスパルタが効いてんのか知らねぇが、遅刻癖も大分良くなったらしいじゃねぇか、疾風。」



お父さんが食事中急に口を開いたので、辺りの汁のすする音さえさっと消えた。




夕飯はお父さん、お母さん、私、太郎、大和、お父さんの組の一部の人(と言っても数十人)と毎日一緒に食べるから、毎晩宴会場のような状態だ。





障子だけで仕切ってある3つの部屋を、その障子を取っ払って3つ繋げるとがらんと広いスペースになる。




そこに小さな台がいくつも並べられ、夕飯時になるときちんと一汁三菜が用意してある。




毎晩おいしいご飯で私は幸せ者だ。




「ま、まぁ」




本当は大和のお陰なんかじゃないと悪態をついてやりたいところだけど、目の前でその大和本人が監視体制でこちらを睨んでいるので我慢だ。


「良いことだ…。ほら、太郎もちょっとシュッとしたんじゃねぇか?」




「…えぇ…。疾風さんに会えない日もあるんで…やつれてきました。」



「丁度良いじゃねぇか。おめー最近体たるんで刺青の髑髏もパンダみたいになってきてたところだったろ....」



パンダ…!と思わず汁を吹いてしまいそうになったが、堪えた。




お父さんがさっさと食事を終え、立ち上がった。

その隣でご飯をお上品に食べていたお母さんも立ち上がり、手際良くお父さんに羽織ものを羽織らせる。




「ともかく、大和は俺の代わりにしっかり疾風を守れよ」



お父さんと共にご飯を食べ終えていた大和は、立ち上がって浅く頭を下げた。




そしてお父さんが部屋から出て行くまで、その頭をずっと上げないままだった