(歩いて帰るの、久しぶりだなー…)
なぜか少しわくわくした気分で小さく鼻歌なんか歌いながら歩く。
太郎にはすごく心配されたけど、まだ夕方だし、大抵のことなら1人でどうにかできる自信がある。
太郎もそれを知ってか知らずか、最終的には渋々許しをくれた。
ふと横を見上げると、ついこの前まで満開だった桜の花がもう葉桜になっていた。
(もうすぐ夏だなー)
桜の木を見る度にお爺ちゃんやお父さんの背中にある桜の刺青を思い出す。
桜の中に迫力のある虎が牙を剥いている刺青で、小さい頃はよくそれをみては泣きじゃくっていたけど
今では自分がその刺青を受け継いでいる。
虎沢の血縁がある者で、且つ、お父さんに認められた者だけがこの刺青を受け継ぐことができる。
これは誇りであり、ある意味呪いのようなものでもある。
(私は一生この刺青を背負って生きていくんだ)
チクリと背中に痛みが走り、桜から目を背けて再び歩き出す。
別に虎沢が嫌なわけではないし、虎沢を裏切る気もない。
だけど、それを目に見えるように誓いの印として背中に刻みつけられると重みが強くのし掛かる。
それが17の私にはまだ重すぎた。

