未来の白バラ


変わりない空、風さえも吹かない。
でも庭には、白い薔薇が咲いている。
それが当たり前なのです。

「入るぞ」
ノックもせずに入って来たのはいつも見る顔でした。

「まだ入っていいって言ってませんわ」
「けっ・・・!またか」

私は咲花 ロイカ(女)15歳。
9歳の頃に体調をくずしてから、ずっと家の中で寝てばっかりです。

「体調・・・どうだ?」
「それは、イヤミですか?」
うろたえる顔を見てクスッと笑う。
私の幼なじみの秋坂 境(男)15歳。いつもお見舞いに来ます。


「冗談ですわ。それに体調なんて、わかっているのでしょ?」

私はもう長くありません。
余命3年・・・それを聞いてから、何もかもよくなってしまいました。
3年じゃぁ・・・意味ないのです

「別に毎日来なくてもよろしいのよ・・・?」
花を飾る境に冷たい一言をいい放つ。


あ・・・まただわ。
話が続かない。
「・・・・・白薔薇」
「ロイカ好きだろ?白バラ」
ニコッと笑う境。
「・・・・・そうですわね」

いつも近くにいて、当たり前のように咲いておられるから好きなだけ。

「これ、親父さんから」
境の手にはひとつの封筒。

お父様は海外にいてここにはなかなか来れません。
時々、手紙を送ってくれます。

「ありがとうございます。」

ふと、時計を見る。
「学校・・・遅れますよ」
「うわっ!マジだ・・・それじゃあ」

そう言って部屋を出て行った。
こうして私の1日が始まるのです。
・・・・始まるとは言えませんわ。
眠りにつくの。


そして夢を見るのです。
いつもと同じ夢を。

白薔薇畑の中で転がっている夢を。

何故でしょう。家より夢のほうが、こんなにもいい気持ちなのは・・・

白薔薇の蕾が花開く。
風で花びらが散る。

まるで私の寿命のように。

白薔薇の花びらが積もっていく。
埋もれる私を誰かがこう言ったのです。


『その運命を変えてあげる』

・・・・・・って。


カラーン カラーン
3時の鐘の音が響く。

「お昼・・・・食べてないませんわ」

「お昼はサンドイッチを庭で食べようかしら」

風がヒュウっと吹く。
「あっ・・・・・!」

風でサンドイッチを入れていたカゴが飛んでいってしまった。

「よっ!」
誰かがカゴをキャッチした。
ふと、横を見るとカゴを持った男の子がいました。
「はいっ」

見かけない子……どこの子がしら。
「どなたかは存じませんが、ありがとうございます」
男の子からカゴを受け取る。
「君一人?そのしゃべり方ってお嬢様っぽいね。」

これっていわゆる…‥なんていったかしら……ナンパですか?
確かに私はお嬢様かといわれたら、そうかもしれませんわ。

「はい。一人ですがなにか?」
そう言うと少しうろたえて笑った。

ぎゅるるるる~。

男の子のお腹からなにやら大きな音が。
「まあ、大きなおと。サンドイッチ…‥食べますか?」
顔を赤らめながらコクりとうなずいた。

「んまーーい!」
幸せそうな顔をしてサンドイッチをほおばる。

「貴方はどちらの方?」
「僕?城井 リュカ 15歳(男)君は?」

「私は咲花 ロイカと言います」
いい名前だね。とお褒めの言葉をいただきました。

「もったいないお言葉、ありがとうございます」

ヒラリとお辞儀する。

「やっぱり君はお嬢様っぽいね!!」

彼がニコッと笑う。

・・・・・・それにしても何処からいらっしゃったのでしょう?