千愛実は真っ直ぐ俺の目を見て言った。


「龍牙、辛そうな顔してる……」


……は?


「一人でどこかに行っちゃいそうな顔してた。だから、こうやって引き止めようと思って」


それから千愛実は、


「龍牙、仕事しよっか」


そう言いながら、ニコっと、いつものように俺に笑いかけ、俺から手を離した。



今の話を聞いていたはずなのに、千愛実は俺の過去を聞いてこなかった。