「龍牙」
聞き慣れた声がして振り返ると、若い三十代のスーツを着た男がいた。
「緒方さん」
緒方雅俊(おがた まさとし)
親父の右腕といわれている男で、俺にとって年の離れた兄貴のような男だ。
「こんなところにいたのかー。早くしないと仕事おくれるぞー!てか、緒方さんはやめろって言ってんだろー?マサでいいって」
そう言って緒方さんは優しく笑う。
「あれ?女の子?」
マサが俺の隣にいる千愛実に気づいた。
「こ、こんにちは!遠藤千愛実といいます!」
千愛実が勢い良く深々と頭を下げた。
そんなに頭下げなくても……。
「こんにちは。緒方雅俊です。龍牙の父親の部下です……彼女さん、かな?」
は!?
「違うって。こいつはそんなんじゃない」
こいつが彼女とか、ありえねぇだろ。



