「千愛実ー!置いていかないでよ!」
龍牙の制服の袖を掴んだまま後ろを振り向くと、南波と愁季くんが慌てたように小走りで追いかけてきていた。
あれ?
「そんなに早く歩いてないんだけど…」
うん。普通に歩いてたはず。
「愁季と話してたらいなくなってたんだもん」
あ、話してたのか。
南波と愁季くんは話が合うらしく、会話が弾むんだって。
そのうち付き合いそう。
「このあとどこ行くの?」
龍牙に向き直って聞いたら
「……親父んとこ」
親父……。
あ、仕事かな?
「仕事ってこと?」
「………」
返事なし。
これは肯定ということでよろしいんですね?



