俺を、許さない?
どういう、意味…?
次の瞬間には、私の体は温かいものに包まれていた。
…龍牙が、私を抱きしめてる?
「龍牙…?」
「俺は、千愛実が追い詰められてたことに気づけなかった自分が許せない」
なんで…?
悪いのは私なのにっ…。
「龍牙は悪くない!私がちゃんと言わなかったから……」
「違う。俺が千愛実の変化に気づいてやれなかったんだ。
ずっと疑問に思ってた。何で定期的に千愛実が俺に会いに来ない日があるのかって。
病院に行ってたんだろ?俺がその理由をちゃんと聞いていたら……千愛実がこんなに苦しむことはなかった」
龍牙…。
なんで…なんでそんなに優しいの?
悪いのは過去を話さなかった私なのに…。
私は龍牙を傷つけたんだよ?
なのに、なんでそんなにも……優しく抱きしめてくれるの……。
「お前は汚れてなんかねぇ。だから、ずっと俺の隣にいろ。過去は過去だ、今は関係ねぇよ。
俺はお前が側にいてくれるだけで……それだけでいいんだ。一緒に乗り越えようぜ」
龍牙が優しく私の涙を拭う。
優しく笑って頬を撫でてくれる。
「ふぇっ……っ…」
大粒の涙が溢れた。
私、龍牙の隣にいてもいいんだ。
過去に怯えなくていいんだ。
そう思ったら、涙が止まらなかった。
もう、過去に囚われなくていい。
縛られなくていい。
私は、前を向いていいんだ。
希望を持っていいんだ。
ありがとう。
ありがとう、龍牙。
「千愛実」
龍牙の手が、私の頬を包む。
次第に近づく互いの視線。
そして、ゆっくりと重なり合った唇から伝わる温かさと安心感。



