「ヤダっつったらどーすんだよ」



幻聴じゃない。



声のした方を見ると、龍牙が部屋のドアに寄りかかるようにして立っていた。




「龍牙!?なん、で……」




なんでいるの!?




「あたしが呼んでおいたの。あたしが来た時から、ずっと居たんだよ。隠れててもらってた」




えぇえ!?


じ、じゃあ、さっきの会話全部聞いてっ…!?




「あたし、愁季が待ってるから行くね。二人でちゃんと話し合ってよ」



南波は鞄を持って足早に出て行ってしまった。




「……」

「……」





しばらくの沈黙。


すごく怖い。




どうしよう、やっぱり怒ってる…よね?





「あ、あの…龍牙…?」


「なに」


「怒ってる…よね?」


「当たり前だろ」




で、ですよね……。

私が龍牙の立場だったらすごく怒ると思うし…。





「…あのさ」


「?」


「なんで過去のこと話さなかった?」


「……」


「お前、俺の立場になって考えてみろよ。やっと信じられる女に出会えたと思ったら、急に別れ話だ?

はっ…ふざけんじゃねぇ」





どうしよう、龍牙、すごく怒ってる…。

じわっと涙が滲む。



私は泣いていい立場じゃない。

責められて当然の立場なんだから。




ぐっと唇を噛んで涙を堪えた。