南波に背中を優しく撫でられながら、私は全てを話した。



太一に脅されていたこと。

最後のデートのこと。


…龍牙と、別れたこと。





「私っ……私、どうしたらよかったのっ?」





分からなかった。



龍牙と別れるしかないと思った。




本当はこんなはずじゃなかった。

龍牙と離れる気なんて、微塵もなかったのに。




やっと掴んだ幸せを、自分から手放してしまった。


けど、それしかなかったんだ。


龍牙が幸せになれる方法は、それしかないと思ったの。



綺麗事かもしれない。

ただの自己満足かもしれない。



だけど。




「汚れてる私なんかが…龍牙の隣にいちゃいけないんだよ……」




汚れた私が隣にいたら、龍牙まで汚れてしまう。




「そんなことない!そんなことないよ、千愛実!」




ガシッと南波に頬を挟まれた。




「千愛実が汚れてる!?どこがよ!!あたしから言わせれば、千愛実ほど心が綺麗な子なんていないわよ!」



「み、なみ…?」




南波の目には涙が溜まっていた。


今にも流れてしまいそうな涙をぐっと堪えているようだった。




「千愛実はいつも正直で一生懸命だし、過去にあれほどの事があったのに前を向いて頑張ってる!!

前を見て全力でぶつかってきたからこそ、龍牙くんだって千愛実に心を開いたんでしょ!?違う!?」




南波は、はぁ、はぁ、と息を切らしながら私を見つめた。


呼吸が落ち着いたところで、南波は私に言ったんだ。




「そんな弱気になって、過去を言い訳にして逃げてる千愛実なんて…千愛実じゃない。

あたしの知ってる千愛実は、誰よりも真っ直ぐで強い子だよ」




南波が「そうでしょ?」と目で私に訴える。


その目はひどく、優しかった。




「わ、たし……間違えたんだ…っ…」




私は、答えを間違えたんだ。