これでもう、心に溜まっていたものは何もない。
部屋を出て、千愛実の姿を探した。
「あの、女子高生見ませんでしたか?」
「ん?あぁ、女の子ならさっき外に出て行くところを見たよ」
「ありがとうございます」
俺は急いで外に向かった。
早く千愛実の顔を見たかった。
外に出ると、千愛実が壁に寄りかかって立っていた。
「おかえりなさい!」
俺に気づいた千愛実が、ニコッと笑いかける。
俺は千愛実を引き寄せて抱きしめた。
「え!?龍牙!?」
突然のことに、千愛実は最初あたふたしていたが、しばらくすると大人しくなって、俺の背中に腕を回した。
「ちゃんとお話できた?」
「あぁ。お前のおかげだ」
「私何もしてないよー」
いや、十分してくれてるよ。
お前のその真っ直ぐなところに救われてんだ。
「帰るか」
「うん」
そして俺たちは手を繋いで道を歩いて行った。



