「分かった、千愛実ちゃんのこと考えてたんだろ!」
「……」
「え、まさかの図星?」
自分で言って驚いてんなよ。
「まぁ、確かに気になるよなー。あんなに毎日顔見せてたわけだし。南波も何も言わないしさ」
授業中も考えてるのは千愛実のこと。
集中できなくて目を閉じても、千愛実の笑顔が頭に浮かぶだけで、結局集中できない。
ああーーっ、クソ!!
なんで俺がこんなに悩まなきゃならないんだよ!!
「龍牙くん、途中まで一緒に帰らない?」
放課後、坂井がそう言って俺のところにきた。
別に方向も途中まで一緒だったし、俺は頷いて合図した。
校門を出て坂井と歩いていると、やっぱり感じる誰かの視線。
毎日誰だよ、俺を見てる奴は。
「どうしたの?」
「いや、何でもねぇ」
坂井に返事をして一歩歩いた瞬間、後ろからガサッと木の揺れる音がした。
気になって反射的に振り向くと、パタパタと走り去って行く、小さい女の背中があった。
黒髪のロングストレートの髪、そしてウチの学校のではない制服。
俺は気づいたら、その背中を走って追いかけていた。
「え!?龍牙くん!?」
坂井の声に答えることなく、俺はその背中を追って行った。