それから二週間が経とうとしていた。
龍牙への恋心は、消えることはない。
思い出すのは、龍牙のことばかり。
初めて笑いかけてくれたこととか、男の子から庇ってくれたこととか。
一緒にお昼を食べたり、アイスを食べたり。
思い出すだけで、涙が溢れてくる。
「千愛実、大丈夫?」
「み、南波ー……っ……」
南波には、私のことは話さないようにお願いしている。
「千愛実、自分の幸せを求めたっていいんだよ?このままじゃ、千愛実が傷つくだけだよ」
「ううん……。私、思ったの。確かに龍牙と一緒にいると、すごく幸せな気持ちになれた」
できればこのままでいたいと、自分の幸せを求めたんだ。
「でも、思い出したの。私には、いつだってあの過去がついて回ってるんだって」
汚れた私を好きになってくれる人はいない。
あれ以来、私に声をかけてくれる人は、ただ、私に同情しているだけの人だった。
クラスの女の子達、親戚……。
男の子に至っては、私を軽い女だと馬鹿にした。
今だってそう。
どこからの噂なのかは知らないけれど、私に体の関係を持ちたいと言ってくる人もいた。
だから、いいんだ。
「私、きっと龍牙を諦めることは出来ないと思う。けど、もういいの。好きな人が出来ただけで、幸せだったから」
今はもう、遠くから想ってるだけでいい。
運命の人だと思ったの。
この人となら、過去から抜け出せるかもしれないって、そう思ったの。
過去から抜け出せないのは、私だけでいい。
「南波!私に遠慮しないで、愁季くんと幸せにね!」
「千愛実……」
大丈夫。
私は一人でも、きっと大丈夫だから……。
そう自分に言い聞かせ、私は空を見上げた。