お父さんって、家を出ていったっていう……。
「昨日突然……。私、どう接していいか分からなくて……」
そう言った坂井を見て、前の自分と重ねた。
母親が死んで心を閉ざした俺は、人と接することを避けてきた。
けど、アイツはどんなに避けても突き放しても、笑って俺から離れようとしない。
こんな無口な男の何がいいんだか。
まぁ、そんなアイツのおかげで、初めはどうやって接していいか分からなかった奴とも、最近は話したりするようにもなった。
どう接するかなんて、考えなくていい。
自分の思ったままに接すればいいんだって、アイツから教わったんだ。
「無理に接することねぇと思う」
「え?」
「タイミングとかもあるだろうし。とりあえず、笑っとけばなんとかなる」



