side 龍牙



放課後、愁季と一緒に校門を出ると、いつも抱きついてくるはずの千愛実がいなかった。





いるのは瀬田だけで、愁季が聞いたら、用があって今日は来ないと瀬田は言った。




俺も今日は親父に警察署に来るようにと言われていた為、それはそれで都合がよかったんだけど。




結局、何の用かと思ったら、部下の人と一緒に買い物に行けというただの雑用だった。




親父のやつ、最近人使いが荒くねぇか?





まぁ、それでも、こんなことではないと親父と会話をすることもないからな。





部下の人と買い物をして、警察署に戻ろうとしていた帰り道。



ふと視線を泳がすと、少し遠い所で制服を着た女子高生が、フラフラとした足取りで歩いているのを見つけた。





大丈夫か……?




そう思ってよく見てみると、その女子高生には見覚えがあった。



あの制服……雛高のだよな。




「龍牙ー、どうしたー?置いてくぞー」


「あ、はい。すみません」




部下の人に返事をしながら、もう一度よく女子高生を見てみると……。





「千愛実……?」




その女子高生は、間違いなく千愛実だった。



「すみません!先に行っていて下さい!」


「あ、おい!龍牙!?」




俺は買い物袋を持ったまま、千愛実の元へ走り、倒れそうになった千愛実の体を受け止めた。