こんな状況なのに、康さんの気持ちがわかったことを嬉しくなんて思っている俺の耳に亜美の声が届く。
「私は死ぬことなんて怖くない」
そう言いながら、足を前に進めようとする亜美。
何言ってんだよ。
お前がそんなこと言うな。
俺はお前を失うことが怖くてたまんねぇよ。
俺を真っ直ぐに見つめ、一歩一歩近づいてくる亜美。
そのびに、ナイフが首に食い込む。
「亜美!!動くな!!!!」
頼む。
やめてくれ。
「伸也さん……」
俺に何かを求めるように手を突き出した亜美は、歯を食いしばって、全体重を前にかけた。
「亜美!!」
俺は何もかも忘れ、ただ目の前にいる亜美を受け止めた。
チャリーン
床に転がるナイフ。
俺の腕の中でぐったりとする亜美。


