仕事場にはいつも亜美を連れて行ってたけど、この日に限って俺は亜美を部屋へと残していった。
カズに亜美との時間が足りないとこの間泣きつかれたばかりだったから……
俺の側においておきたいのは山々だけど、亜美には“友達”っていう存在も必要だ。
そして、カズにとっても亜美の存在は必要だろう。
仕事中も亜美の事ばかりを考えてしまう俺はどうかしてしまったのかもしれない。
仕事に集中できない俺は酒をグラス一杯飲み干した。
これで少しはマシになるだろう。
空になったグラスをテーブルに置いたその時
カシャーン
グラスは転がり床へと落ちた。
スローモーションのように砕け散るグラス。
嫌な予感がした。
背中には汗が流れていく。
俺は慌てて1階のホールに向かおうと部屋の扉をあけた。
「伸也さーーーん!!こたぁを助けて!!」
ガヤガヤと五月蝿い店内にカズと遊んでいるはずの亜美の声だけが鮮明に俺の耳に届く。
慌てて階段に駆け寄るとそこには手すりにぶら下がり今にも倒れそうな亜美と、亜美にもたれ掛かりながら泣いているカズの姿が……
「亜美、何があった?!」
俺はすぐに亜美に近づき、体を支えた。
「こたぁを助けて」
「車持って来い!!」
階段の上からその光景を見ていた遼に向かって俺は叫んだ。
あいつ等が動き出したんだ。
「場所は?」
亜美は俺の腕の中でぐったりとしていく。
「亜美、答えろ!!場所は?!」
「場所は……」
そこまで言うと亜美の目は完璧に閉じてしまった。


