バース(アイシテルside伸也)



どうしてここまで、この女のことを毛嫌いするのか……



視界に入るだけでイライラするなんて、今まで一度だってない。



俺は始めてマジマジと女の顔を見つめた。



そして「いいから立て」と言いながら腕を掴み、立ち上がらせようとした瞬間……



「触らないで!!!!」



……と女は大声を上げた。



叫ぶようなその声に驚いて俺は手を離した。



「なんなんだよ。お前」



「ほっといてください。伸也さんには迷惑かけませんから」



下唇を噛み締めながら、握り締めた手が小刻みにふるえている。



遠くを見つめるうつろな目に俺は悲しみを感じる。



この顔……


いつも目にしている。



人生を諦め、投げやりになっている奴らはみんなこの目をする。



かつての俺のように……