店が忙しくなりそうな時間帯に俺は店内をバタバタと走り回っていた。 「伸也さん。お客様が見えてますよ」 敬語なんて使えなかった奴らがこうして話しかけてくるたびに、微笑ましく思える。 「客?」 「女の方です」 俺を訪ねてくるような女はいないはずなのに…… 俺は何かの罠かと警戒しながら、女が待つカウンターへと足を運んだ。