それから間もなく、浩司が慶一の元へ訪れた。

そして、頭を下げて、詫びた。


「義兄さん……すみません……すみませんでした……」

何度もそう繰り返す浩司に対しても、慶一は何も言えなかった。

自分が浩司に何かを言える立場ではないことは、分かっている。



「義兄さん……僕がこんなことをいうのは間違ってるけど……どうか、僕の家族には……このことは言わないで下さい。…もう……僕がここの家の人間として認められなくてもいいですから……だからどうか……お願いします」

浩司は、あの時と――先代に結婚を請った時と同じようにその場に正座をし、手をついて頭を下げた。


「…もういい。誰にも言うつもりなどない。誰かに、言えることではないからな」

慶一は、静かにそう言った。






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