夏月一会


それにしても、だ。



「凪君て、人物画も描けたんだね」

話を変えて、凪に言った。


「普段、時間だけはあるからね。色々描いたりしてるんだ」



本当にすごい。

凪の絵は、素人が描いたとは思えないような、作品性があると思う。

被写体もなく、こんなに上手に描くなんて芸当は、私には真似できない。


凪にはやっぱり才能があるんだと思う。



「凪君は、将来画家になりたいとか?」


「まさか。そんな大それたこと、考えたこともないよ」

凪は軽く笑い飛ばした。


「進学とかも、考えてないの?美大とか……高校卒業してなくても、高認に受かればいくらでも行けるんだし」


凪の絵の能力をこのまま趣味にしておくのは勿体無いと思う。

無責任かもしれないけど、私は凪にそう言ってみる。


「…んー。そこまでは考えてないかなぁ。とりあえず描いてるだけで十分だし、あんまり専門的なことまで勉強しようとか思わないんだよね」


「でもそれは、今は、でしょ?これからどうなるか分からないよ」


「うん…そうだね」


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