暫く見ていると、男は私を見た。
「もういいだろ。帰れよ」
男は私の目の前をまた去った。
私はまた何故か追う。
同情かもしれないけど『ほっとけない』
私の癖毛の肩くらいの髪が風でフワッと顔の前にかかる。

私…何がしたいんだろう。

男の人の背中は大きいのに寂しげに見える。そんな人は、ここの都会にも田舎にもきっとごまんといる。それでも目の前
にその理由をわかった人がいるのに。

人間は無力だ。

男はどんどん人混みから離れた荒れた所に来る。
よくテレビで言う不良の溜り場とか浮浪者とかそんな人がゾロゾロいる。
日本にもいたんだなって思って辺りを見ると私を見るその人達の目は荒んで、下品な笑いで私を見て何か言っている。
男は、姿を消して行く様に何時の間にか遠くにいる。
ヤバイと思って急いで追いかけると、肩をもたれた。
「きゃっ…」
「お嬢さん一人?」
不良の団体はニヤニヤ笑って私の上から下をジロジロ見る。
『嫌だ。怖い』
言葉は言葉にならない。
急いで不良の男に肩を持たれた手をはねのけ走るが、違う横から来た不良の男に捕まる。
「おー。威勢いいな嬢ちゃん」
顎を強く持たれた。
『こわい…恐い…』
「はなっ…離して…」
やっと言葉に出た。
「離してーだって…」
「はははははは」
下品な笑いが飛び交う。
『恐い…』
下を向く私は、正直泣きそうだった。
本当に自分が何をしたいか分からない。

両目を閉じて不良達を睨みつける。
『置いて行かれたくない』
私は不良の群れから必死で逃げる。
「ははは。無理無理絶対逃げれねぇよ」
不良達は笑う。
『精々笑っていろ。恐い…嫌だ帰りたい』
どこに…?
私は帰る場所なんかない。
私は追いかけてくる不良達を見て考えながら走る。
私の体力はもうないに等しい。
このままどこへ行ってもきっと不良には追いつかれるし、男に逃げられるし最悪だ。
私は辺りをよく見た。