ほんの少し

私は鬼ごっこで言うと鬼は追いかけないといけないし走らないといけないだから嫌いだ。
でもだからと言って追いかけられる方も嫌いだ。
だって気持ち悪いから。
分かっていても、私は彼を追いかけた。

男はどんどん人混みに行き、私をまくが、結構人を探すのは得意な方で、何より背の高い男を探すのは簡単だったし、背が低いから避けるのは得意だった。
それなのに、男は私より上手く前に進む。
そろそろ足が痛くなってきた。
それでも男を追う。
息が荒くなってきた。
男が横へ移動する。
ラッキーだと思い追いかける。
すると、男に腕を強くもたれ睨まれる。
「付いてくんなつったろ。何だよ。お前」
「っ…」
唾を飲み、男を見た。
男の目に光りはない。
「死にたい？」
私の質問に男は睨んだ。
「何なんだよお前。俺の何知ってんだよ。抱かれても仕方ねぇよな」
私の胸を男は鷲掴みに強く握る。
「っ…」
それでも強く私は睨むままで何も言わない。
男も睨み、私を見て溜息を着く。
足はガクガクと震えていた。
「男に付いて来るってそうゆう事なんだよ。確かに俺は女に振られた。20年間好きだった女に」
男は私の胸から手を離し、そのまま上を向き壁に崩れる様に寄り掛かった。
「結婚同然に付き合ってた。いや。もはや夫婦同然だった。なのに振られた。10年も前の男に取られたんだぞ！俺のした事何だったんだよ…」
頭を抱えてうなだれる男を見て何も言えずに見ていた。