「まひろは、」



ミルクティー色の髪を揺らしながら、俺に笑いかけるときとはまた違う笑顔で喋るあの子はそう呼ばれていた。




まひろちゃん。



苗字だけでもいいから知りたいなぁ、なんて思っていた気になるあの子の名前は、思いもよらない展開であっさりと知ることができた。




陽だまりのような、あの子に似合う名前。




「ごめーん待たせたなー!
 行くかっ」



戻って来た裕一が、中々動こうとしない俺の腕を引っ張って無理矢理連れて行かなければ、俺はあの子の、

まひろちゃんの、いつもより近距離にある笑顔にずっと見入って、授業に遅刻したかもしれない。




……まあ実際も、チャイムと同時に理科室に滑り込みセーフ、っていう遅刻ギリギリのラインだったのだけれど。