「じゃあ、川上また明日な!」
駅まで着くと山上くんは私の顔を見てふわりと笑った。
「あ、うん。またね」
私が山上くんの手を離さそうとすると、山上くんはなぜか手に力を入れて一向に離してくれない。
「あのー、山上くん。わたしはそろそろ帰りたいのですが」
「なんで電車が逆方面なんだよ!」
急に山上くんが呟いたかと思うと、
「送ってかせて?」
なんて可愛い顔して尋ねてきた。こんなの断れるわけないじゃん。
「いいの?」
「送っていきたいの!」
山上くんはぷいっとそっぽを向いた。
そんな仕草まで可愛くて、私は少しドキドキしてしまった。
「あ、ありがと」
「どういたしまして」
もっと可愛くお礼が言いたいのに素直になれない私はぶっきらぼうにお礼を言う。それなのに山上くんは、嬉しそうに笑った。
彼の家の方向の電車が来たにも関わらず、彼はそれを見送って、私の電車を一緒に待ってくれる。
山上くんは優しい人です。
結局家の前まで送ってくれた山上くん。これから自分のお家に帰らなければ行けない山上くん…一体どれだけ時間がかかるのかな。
なんとなくだけど、少し申し訳ない気持ちになった。
「またな!」
なんて笑って背を向ける彼を見るとそんな気持ちにさせられた。
だけど、ありがとう。なんて優しい気持ちも浮かんできて、私は彼の背中が見えなくなるまで目で追いかけた。

