私の描いた理想郷

「菜夢さん。何描いてるの?」
隣の席の桜城鈴さんが椅子から身を乗り出し、スケッチブックの中を見ようとする。
「っ…!!」
私は反射的に勢いよく閉じた。
バンッ!と鳴り響く放課後の1-Bの教室。
やば…。目立っちゃう……!
気分悪そうに私を睨む桜城さん。
「なによ。見ちゃ駄目っていうの?わかったわよ。クラス1の根暗さん?」
周りからクスクスと笑い声が聞こえる。私は人より耳と目が良いので嫌な程はっきりと聞こえてしまう。
笑いながら友達と教室を出る桜城さん。
桜城さんはクラス1の傲慢。クラスのリーダーでもある。
私の1番苦手な人だった。