味噌味のお鍋の蓋を開けると湯気が上がって煮込まれた味噌の匂いに鼻腔を刺激されてお腹がすく。ミィコ小宮にも持って行ってあげようか。それだったら、この間のお礼もできるし、しかも返し忘れていたマフラーも渡すことができる。
小さめのお鍋に具を入れて蓋を閉めた。お鍋を持って何を言うか考える。えーと……こんな感じで言おう。
『この間のサンマとビールのお礼です。マフラーもありがとうございました』
それを何度か頭の中で繰り返した。玄関の前で考えていたら、身体は冷えてかなり寒くぶるっと震えた。
よし! 来い! ミィコ小宮!
いや、違う。私が行くんだった。決意を新たにインターホンを押す。出てくるのを待っていると緊張が高まるようだった。
ただのお隣さんじゃないか。なんでこんなに緊張しなきゃいけないんだろう。
……なんて言っても理由はわかっているんだ。
私、人見知りだから。



